本記事では「歴史学と史料って、どういう関連があるの?」「歴史学の歴史とは?」「そもそも史料ってどんなもの?」という疑問をお持ちの方に向けた内容となっています。
参考にさせていただいたのは、『歴史学の思考法』(東京大学教養学部歴史学部会編)という本です。本書は東京大学の教養課程で使用されている本で歴史学を学びたい方にとっては有益な書籍です。
本記事をお読みいただくと、歴史学における史料の重要性や史料とはどういったものなのか、基礎的な理解ができます。
まず歴史学の営みと史料とは、どのようなものでしょうか?
歴史学の営みと史料とは?
まず歴史学の営みとは、①過去への「問い」②事実の認識③事実の解釈④歴史象の提示、それに加えて①~④と並行して先行研究(従来の研究)の調査・確認をすることです。
そして史料とは、過去の事実(「いつ・どこで・ヒトやモノが・どうであったのか」)をできるだけ「正しく」認識(特定・確認)することを支えるものです。
次に史料の正しさと史料の読解に必要なこととは、どのようなものでしょうか?
史料の正しさと史料の読解に必要なこととは?
ではそれぞれについて詳しく解説します。まず大学の歴史学では、高校の歴史の勉強とは違って、細かい年号や人名の暗記は求められません。その代わりに新しい歴史像を提示することが求められます。
その歴史像は史料に基づき検討されます。ただし私たちは過去を直接見ることはできません。そのためその史料の「正しさ」とは、「なるべく多くの人が納得できるように」「誰にでも検証できる形で」といった意味での「正しさ」です。
史料は批判的に検討されます。史料批判を的確に行うためには、「時代状況・史料上の言語・書体・度量衡・暦法・地理」(『歴史学の思考法』p24より参照)などの知識が必要です。大学で専門的に学ぶには上記、特に「語学力」が必要とされます。
次に歴史学の対象と歴史像の変化とは、どのようなものでしょうか?
歴史学の対象と歴史像の変化とは?
また歴史学の対象とは、すべての事実のうち、認識可能な事実の中の、認識された事実とものです。
そして歴史学において歴史像は変化しても問題ないとされています。というより「定説」も一度定まったら、完了というわけではなく、歴史像(や事実認識・解釈)が更新されれば、それに連動して変化します。歴史の教科書で習ったことも、変わり得ます。なので知識のアップデート(更新)はしておきましょう。
次に歴史学の「営み」とエドワード・ハレット・カーの言葉とは、どのようなものでしょうか?
歴史学の「営み」とエドワード・ハレット・カーの言葉とは?
また歴史学の「営み」は現在において行われます。その現在から過去へ問いを立てます。つまり歴史学は現在と不可分です。現在はすぐに過去になります。現在は時とともに過去に流れ去っていくからです。そして現在はまた問い直されます。つまり過ぎ去った現在が過去になり、新しい現在から新たな過去が問い直されるということです。
ちなみに歴史学とは、イギリスの歴史家エドワード・ハレット・カーの言葉を借りると、「現在と過去との尽きることを知らぬ対話」の総和(同書p27より参照。)であると言えます。つまり現在から過去へ、過去から現在へと、終わることのない相互レファレンス(参照)をして学ぶべきであると僕は解釈します。
まとめ
いかがだったでしょうか?本記事では「歴史学と史料って、どういう関連があるの?」「歴史学の歴史とは?」「そもそも史料ってどんなもの?」という疑問をお持ちの方に向けて、『歴史学の思考法』(東京大学教養学部歴史学部会編)という本を参照にして、みなさまの疑問の解決に努めてまいりました。本記事をまとめると以下になります。
- 史料の正しさとは、多くの人にとって、納得可能かつ検証可能であるといった意味での「正しさ」である。史料の読解に必要なこととは、「時代状況・史料上の言語・書体・度量衡・暦法・地理」などの知識の他に、特に「語学力」が重要である
- 歴史学の対象とは、すべての事実の中の、認識できるもののうち、認識された事実である。歴史像は固定的ではなく、変化しうる。
- イギリスの歴史家エドワード・ハレット・カーによれば、「歴史とは現在と過去との尽きることを知らぬ対話」である
本記事をお読みいただいて、少しでも歴史や歴史学の楽しさが伝われば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
東京大学教養学部歴史学部会編『歴史学の思考法』
エドワード・ハレット・カー『歴史とは何か』