みなさん、こんにちは!
突然ですが、私たちが毎日生活している社会は、一体どんなルールで成り立っているか考えたことはありますか?
「ルールなんて法律で決まってるじゃん!」と思うかもしれませんね。もちろんそれも正解ですが、実はもっと根本的なところで、社会のあり方や、私たちがどう生きるべきかについて、昔から多くの賢い人たちが頭を悩ませてきました。
今回は、その中でも特に重要な考え方として、倫理学と政治学の4つのキーワードを紹介します。
倫理学:正しい行いとは何か?「正義」をめぐる二つの考え方
倫理学は「何が善いことか」「どう生きるべきか」を考える学問です。ここでは、「正義」という言葉に焦点を当ててみましょう。
1. アリストテレスの「正義論」:みんなが納得する分配の仕方って?
今から2000年以上も昔に生きたアリストテレスは、正義には2つの種類があると考えました。
一つ目は「配分的正義」です。これは、名誉や富、仕事などを、人々にどう分配するのが正しいかという考え方です。彼は、単純にみんなに同じだけ分けるのではなく、「その人の能力や貢献度に応じて、ふさわしい分を配るべきだ」と考えました。
例えば、クラスで文化祭の企画を任されたとき、アイデアをたくさん出して、みんなをまとめるのが得意なリーダーには、より重要な役割を与える。逆に、あまり積極的に活動できなかった人には、できる範囲で役割を割り振る。これがアリストテレスのいう「配分的正義」のイメージです。
もう一つは「矯正的正義」です。これは、何か問題が起きたときに、それをどう正すかという考え方です。例えば、友達の大切なものをうっかり壊してしまったとしましょう。この場合、壊してしまった人と壊された人との間に生まれた「不平等」を、元通りにするのが矯正的正義です。具体的には、弁償したり、修理したりすることで、公平な状態に戻そうとすることです。
2. ロールズの「正義論」:もし自分が誰か知らなかったら?
次に紹介するのは、20世紀の哲学者、ジョン・ロールズです。彼の正義論は、とても面白い「思考実験」から始まります。
みなさん、想像してみてください。
もし、自分が男か女か、お金持ちか貧しいか、頭が良いか悪いか、どの国の人か…といった自分のことを一切知らない状態(=無知のヴェール)で、社会のルールを決めるとしたら、どんなルールを作りますか?
当然、誰もが自分に不利なルールは作りたくないはずです。だからこそ、みんなが納得できる、できるだけ公平な社会のルールを考えるでしょう。
ロールズは、この「無知のヴェール」をかぶった状態なら、人々は次の2つのルールに合意するだろうと考えました。
- ルール1(自由の原理):誰もが平等に、基本的な自由(言論の自由や投票の自由など)を持つこと。
- ルール2(格差原理と機会均等原理):お金や地位に差があってもいい。ただし、それは一番困っている人のためになる場合に限る。そして、どんな人にも、チャンスは平等に与えられるべきだ。
この考え方は、単に平等に分けるのではなく、「一番恵まれない人たちの生活を良くする」という視点が入っているのが特徴です。
政治学:国や社会はどう動くべき?四つの考え方
政治学は、国と国の関係や、社会のしくみについて考える学問です。ここでは、4つの主要な考え方を見ていきましょう。
1. リアリズム(現実主義):国は自分のことしか考えない?
リアリズムは、国際社会を「力」の奪い合いだと考えます。それぞれの国は、まず自分の国の安全と利益を最優先に行動する。国際的な約束や協力は、あくまで一時的なもので、最終的には「どの国が一番強いか」で物事が決まると考えます。
国際社会を「ルールや警察がいない、無法地帯」だと捉える見方なので、少しシビアに聞こえるかもしれませんね。
2. リベラリズム(自由主義):みんなで協力すれば平和になる?
リアリズムとは反対に、リベラリズムは「個人の自由と権利」を最も大切にする考え方です。国際社会においても、お互いに貿易をしたり、話し合ったり、国際的な機関(国連など)を通じて協力すれば、平和は実現できると考えます。
民主主義や人権を尊重し、国と国とが協力し合って問題を解決していくことを理想とします。
3. リバタリアニズム(自由至上主義):国家は最小限でいい!
リバタリアニズムは、「個人の自由を何よりも優先する」という考え方を、さらに突き詰めたものです。
国家の役割は、犯罪を取り締まったり、国を守ったりするだけで十分で、それ以外の活動(例えば、税金を集めて貧しい人を助けたり、医療制度を整備したり)は、個人の自由を奪うことにつながるとして反対します。
国家の介入をできるだけ少なくし、個人の自由な活動や市場の働きに任せるべきだと考えます。
4. コミュニタリアニズム(共同体主義):私たちは一人では生きていけない?
コミュニタリアニズムは、「人間は、家族や学校、地域といった共同体の中でこそ、人格が形成される」と考えます。
リベラリズムが「個人の自由」を強調しすぎることで、社会のつながりが薄れていると批判します。私たちが持っている価値観やモラルは、共同体の歴史や文化から生まれてきたもの。だからこそ、共同体の絆や伝統を大切にすべきだという考え方です。
まとめ
今日見てきた考え方は、どれも「こうすれば、もっと良い社会になるんじゃないか?」という問いから生まれてきました。
正義や社会のあり方について、答えは一つではありません。今回紹介した考え方をヒントに、ぜひ身の回りの出来事やニュースについて、「これは誰の正義だろう?」「どの考え方に近いかな?」と、考えてみてください。
きっと、世界を見る目が少し変わるはずです!