歴史は繰り返す?歴史学の周期モデルとは?

本記事は「歴史は繰り返すのかな?」「歴史が繰り返すなら、どんな風に?」「歴史学の周期モデルとは何かな?」という疑問をお持ちの方に向けた内容になります。

本記事をお読みいただくと、歴史学における周期モデルの理解が深まるでしょう。歴史が好きな方もそうでない方も、好奇心を持ってお読みいただけると嬉しいです。ちなみに僕は歴史が好きですよ。

では周期モデルを説明します。

まず周期モデルとはどんなものでしょうか?

周期モデルとは?

歴史学における周期モデルとは、歴史は繰り返すという意味です。すなわち反復性があるということです。それに対して一回限り、すなわち一回性であるという考え方が成長モデルです。今回は周期モデルに絞って説明します。特に環境史の視点と贈与論から解説します。

では環境史とは、どのようなものでしょうか?

環境史の視点とは?

環境史の視点からは、本記事では特に、①周期的変動と②気候変動、③飢饉について扱います。まずは周期的変動です。

まず環境史から見た周期的変動として、気候変動が広く存在が認知されています。気候変動とは、地殻変動や地磁気の変動など自然界の変動で、人類にもっとも関わりが深いものです。

フランスの歴史家フェルナン・ブローデルは「しばしば回帰が繰り返され、絶えず循環している」と、この「地理的な時間」を評しています。

そして次に気候変動について説明します。古環境学・古気候学においては、フランスの歴史家エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリの『気候の歴史』、日本史では山本武雄の「気候の語る日本の歴史」が広く読まれています。

気候変動においては、ローズ・フェアブリッジのフェアブリッジ曲線が今なお農業史や飢饉史の分野で参照され続けています。フェアブリッジ曲線とは、過去2000年の気候変動を1枚のグラフに落とし込んだものです。フェアブリッジ曲線は、日本の古代・中世史研究においても広く支持されています。

最後に、飢饉の時代について説明します。現在知られている地球規模の気候変動は、AD(西暦)1000年前後を中心とする時期と、AD1700年前後を中心とする時期が知られています。前者を「中世温暖期」や「中世異常期」、後者を「小氷期気候」と呼びます。

1991年の「「小氷期の気候」国際シンポジウム」によれば、後者の「小氷期気候」に日本の寛政の飢饉、天明の飢饉、天保の飢饉はここに収まるというアンケート結果が得られました。

農業分野は気候変動の影響を大きく受けますが、その中でも農業技術は、古代では農業技術高く、逆に中世では停滞しているということが近年の研究で分かりました。

次に贈与論の説明をします。贈与論とはどのようなものでしょうか?

贈与論とは?

では人類史における周期性における贈与論的な説明をします。まず蕩尽(使い果たすこと)と緊縮(引き締めること)のサイクル、そしてポトラッチ的消費について説明します。まずは蕩尽と緊縮のサイクルについて説明します。

蕩尽と緊縮のサイクルの中でも、豪勢な建築物や美術・工芸品出てくるのなぜでしょうか?なぜ偏り、間欠性(間に空白がある状態)があるのでしょうか?

たとえば、日本史の院政期、鎌倉末から南北朝期、織豊期がその中でも分かりやすいです。まず院政期では、建築分野では大寺院の建設ラッシュがあり、美術分野では「源氏物語絵巻」「鳥獣戯画」「伴大納言(はんだいなごん)物語」「信義山縁起絵巻」の四大絵巻が制作されました。それに対して織豊(しょくほう)時代では、城郭建築が作られ、狩野派の金碧画(きんぺきが)が有名です。鎌倉末~南北朝期では、「春日権現験記絵(かすがけんげんきえ)」などの絵巻物が多く、足利義満の「鹿苑寺(ろくおんじ)金閣」が現存する建築では代表格です。

このような時期に共通するのはどのようなことでしょうか?それは権力交代期にあたることです。権力者は権力を顕示(はっきり示す)するために、財力で自らを誇示したということです。このような消費の仕方を「ポトラッチ的消費」と言います。

では「ポトラッチ的消費」と政治と文化の周期性をもう少し詳しく説明します。まず前近代の日本は見せびらかす贈与や消費を嫌う社会でした。しかし権力交代期には身分流動性が高まり、ポトラッチ的消費が一時的に許容されて、次代リーダーは気前の良さを示すため、大建築や豪華な美術品で権威を示威(強く示す)しようとしました。

しかし次代のリーダーが確定し、権力の固定化が始まると2代目、3代目からは気前のよさを示さなくなる。そうしなくとも権威を失わないからです。この政治と文化の周期性は、中世の日本だけではなく、近代や現代の日本、あるいは他の諸外国へも当てはまるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか?本記事では歴史学における周期モデルについてお伝えしました。まとめると、

  • 周期モデルとは、歴史は繰り返すということ
  • 環境史から見た周期的変動として、気候変動と飢饉の歴史があること。
  • 贈与論から見た人類史の周期性には、蕩尽と緊縮のサイクル、ポトラッチ的消費があること。

ということを説明しました。本記事をお読みいただいて、さらに歴史への興味・関心をお持ちいただけると幸いです。僕も歴史への造詣を深めていきたいです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

参考文献

『歴史学の思考法』東京大学教養学部歴史学部会編

4件のコメント

  1. イカマサ より:

    歴史は繰り返す!そうですね。色々とありますね。流行なんかもそうですね。音楽、服、車など、あらゆるジャンルに共通していますね。

    1. NaoTo より:

      イカマサ様

      コメントありがとうございます!

      流行は表面的には新しくても、本質的には同じだったりしますね。

      つまり流行する原則・公式はある程度、決まってたりするということです。必ず当たるとは言えませんが、過去に流行ったものを分析してみると、なぜ流行ったのか、流行性の基準が分かってくるかもしれませんね。

  2. みーちゃん より:

    歴史って、やっぱり「繰り返されるんだよなぁ~」『春・夏・秋・冬』季節は永遠に巡っては来る
    2022年の秋は、今年しかありません。楽しんで行きたいですね。

    1. NaoTo より:

      みーちゃん様

      コメントありがとうございます!

      歴史学では、歴史は一回限りの「成長モデル」、繰り返す「周期モデル」があります。どちら一方が正解ではなく、どちらも両方正解です。

      なので一回限りの側面もありますが、繰り返す側面もあります。
      ただ繰り返すだけではなく、一回限りの側面もありますので、「成長モデル」と「周期モデル」両方セットで理解していただけるとよいのではないかと思います!

      季節もたしかに繰り返しますね。日本は四季を経験することができますね。他の国ではそうできないところもあります。四季のメリット・デメリットはありますが、それも含めて楽しみたいですね。

      今年の秋はたしかに「今年」しかありませんね。これは一回性の歴史に関連しますね。一回限りですからね。ともあれ「今ここ」のプロセスを楽しみましょう!

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